大規模修繕工事の流れ

マンションの大規模修繕工事は、概ね10年から12年毎に行うことが一般化されつつあります。特に初めての工事ともなれば、何をどのように進めたらよいのかなど、管理組合様にとって分からないことが沢山あります。なので、まず最初にやるべきことは、大規模修繕の流れを知ることになります。

一般的な大規模修繕の流れについてご説明します。
必要な実施項目の一覧表(下記表)をご参照ください。

段階別 実施項目 備考
準備段階 専門委員会の結成 定例または臨時総会決議 ※専門委員会の運用細則含む
工事形式の選択 設計監理方式、管理会社施工方式、責任施工方式の選択
建物調査診断の依頼先の選考
工事費用の資金計画
調査診断実施の総会決議 定例または臨時総会決議
計画段階 調査診断の実施
修繕の基本計画 工事仕様書・見積内訳書などの作成
工事金額の試算 設計金額の算出
工事見積り参加施工会社の募集
工事見積りの依頼
施工会社の選定 見積りの比較検討
工事着工の総会決議 定例または臨時総会決議
実行段階 工事請負契約の締結
工事説明会の実施
近隣へ工事着工前の挨拶
工事期間中の定例打ち合わせ会議
竣工検査
整理段階 引き渡し、竣工書類受領
工事決算の承認 定例または臨時総会決議
関係書類の保存・引き継ぎ
定期検査の実施

専門委員会の結成

管理組合の理事会は、通常の運営業務を日頃行っていますが、これに大規模修繕の検討実施に関わる業務が加わると大変な負担がかかることになります。また、理事会役員の任期は、一般的には1年もしくは2年で交代してしまいます。
大規模修繕の発意から工事完了までの期間は、複数年の期間を要し、これに携わる人は途中で交替することなく継続的に関わる必要があります。
そこで理事会とは別に独立した継続性のある組織「専門委員会」が必要となり、管理組合では当組織の結成が一般化されています。

<専門委員会の目的>

  1. 1専門委員を固定化し、継続性を持たせる。
  2. 2調査検討を担う諮問機関(委員会)と議決機関(理事会)の機能を分離させ、理事会の負担を軽減させる。
  3. 3組合員の中から有志者(建築・設備の専門家など)を募り、自主性(主体性)を確立させる。

<専門委員会の位置付け>

専門委員会の責任(権限)を明確にさせるために、委員の選任方法、任期、職務、責任範囲などを決める必要があります。
その場合、これらの内容を盛り込んだ運用細則を総会決議(普通決議)により制定するケースが一般的です。

工事形式の選択

大規模修繕の進め方には、設計監理方式、管理会社主導方式、責任施工監理方式の大きく3つあります。

<設計監理方式>

設計及び工事監理を専門家である設計事務所やコンサルタントに依頼し、工事を施工会社に発注する方式です。

メリット
施工チェックを第三者に依頼するため、厳正な工事品質のチェックが期待できます。
また、不要な工事を抑止することができ、競争原理を上手く活用することで適正な価格で発注することができます。
デメリット
工事と設計監理を別々に発注するため、費用が割高になる恐れがあります。
委託先選びのポイント
的確な材料・工法などの選定、厳正な工事品質のチェック機能が求められるため、委託先は豊富な経験と実績があること、工事会社との関連性(癒着体質)のないことが選定条件として挙げられます。

<管理会社施工方式>

管理会社が主体となって、建物診断、実施設計、施工、施工監理を進める方式です。

メリット
大半を管理会社に任せるため、管理組合の労務負担が軽減されます。
また、1社に全てを依頼するので責任の所在が明確になります。
デメリット
管理組合の主体性の低下や大規模修繕への関心度の低下、競争原理が働かないことによるコスト高、第三者のチェック機能がないことによる無駄な工事項目の増加や工事品質の低下などを招く恐れがあります。

<設計監理方式>

施工業者に建物診断、実施設計、施工監理までを一任する方式です。施工業者を複数リストアップして競争入札により決定する方法が一般的です。

メリット
複数の関係業者を1つに集約できるため、管理組合の打合わせに費やす時間などの労務負担が軽減されます。
また、1社に全てを依頼するので責任の所在が明確になります。
デメリット
第三者のチェック機能がないため、無駄な工事項目が増え、工事品質の低下を招く恐れがあります。
委託先選びのポイント
委託先の経営状況、各メーカーとの取引実績、豊富な経験と実績があること、アフターサービスの評価などが選考条件として挙げられます。

いずれの方式においても、特命ではなく複数社を競合させる方法が合意形成を図る上で良い方法といえます。

建物の調査診断の依頼先の選考

建物は経年によって劣化が進行しますが、どの程度の劣化状態なのかを把握するために行うのが建物調査診断です。建物の不具合がどの程度で、どこに現れているのか、どういう原因によるものなのか、または推定されるかを調査診断します。
調査方法として、目視診断、打診調査、バルコニー立入調査などの簡易調査が一般的に用いられています。特殊調査として、塗膜付着力調査、コンクリート圧縮強度調査、シーリング材劣化調査、配筋調査(非破壊検査)などがあります。

  • 目視診断
  • 打診調査
  • バルコニー立入調査
  • 塗膜付着力調査
  • コンクリート圧縮試験
  • 配筋調査(非破壊検査)

依頼先の選考にあたっては、管理会社(リニューアル部門)、設計事務所(コンサルタント事務所)、施工会社(設計部門)が候補として挙げられますが、目利きの診断ができるかが選考のポイントとなります。

※東洋建工では、簡易調査を無償(特殊調査は有償)で行っております。

工事費用の資金計画

大規模修繕の工事費用は、毎月積み立てられている修繕積立金から支出されることになりますが、適切な時期に必要な工事が行えるよう、計画的に資金を確保していくことが重要です。
計画的に資金を確保するために策定されるのが長期修繕計画、資金計画であり、5年毎に見直すことが望まれます。

<専門委員会の目的>

大規模修繕の工事費用に対して修繕積立金が不足している場合の対応方法は、以下のとおりです。

  1. 1不足分を分担する方法(一時金の徴収)
  2. 2金融機関などからの借入れ(この場合、修繕積立金の値上げが必要になります)
  3. 3工事範囲を縮小して工事費用を抑える

※東洋建工では、予算に見合った工事のご提案、実施計画のご提案、マンション管理アドバイザーによる資金計画のご提案を無償で行っております。

修繕の基本計画の策定

大規模修繕の基本計画では、建物調査診断の結果に基づき、「いつ工事を実施するのか?」「どんな材料・数量で、どんな工法で、どのような修繕工事を行うのか?」といった計画を立て、概算費用を求めます。
原状回復の修繕だけではなく、付加価値向上を目的とした改修を加える検討も、本計画において行います。
基本計画では、大規模修繕を行う意義をはじめ、修繕工事の範囲・内容、工法や工期、使用部材の単価・数量などを具体的に設計図面、工事仕様書、見積内訳書などに落とし込みます。

施工会社の候補者選び

施工会社の候補者の選び方として、業界誌による公募、組合員の推薦、近隣管理組合の推薦(紹介)、委託先管理会社の推薦、新築時の建設会社、設計・監理者の推薦などがあります。

<業者選定のポイント>

  1. 1施工会社の選考基準を設ける。
    ※資本金、建設業許可、元請工事実績などがあります。
  2. 2組合員に対しできるだけ情報公開し、選考の経緯や選考の事由を明らかにする。
  3. 3工事の見積基準(工事明細、仕様、工法、指定数量など)を予め設けておく。
  4. 4同一基準で施工会社に見積を依頼する。
    ※こうすることで金額の比較検討が容易となり、施工会社独自の提案がある場合は、別途提出とします。

施工会社の選考にあたっては、書類選考により2社から4社程度に絞り込み、その後、面談方式(選考会/プレゼンテーション)により1社を内定します。
内定後、総会を開催し、決議を以って正式に施工会社を決定します。

資金の確保

大規模修繕の工事見積額に見合った資金を予め確保しておく必要がありますが、今回の工事のみならず、今後において予定される工事費用を考慮した上で、余裕をもった資金計画を立案することが肝要です。

総会手続き方法

大規模修繕工事を行うにあたっては、総会決議(普通決議)を要します。管理規約の変更・制定は特別決議を要し、専門委員会の運用細則の制定は普通決議を要します。

普通決議
各マンションの管理規約に定められています。
マンション標準管理規約・・・出席組合員の議決権の過半数の賛成で可決
例)出席組合員が20戸であった場合、20戸の過半数、代理人及び書面による議決権行使も含めて11戸の同意が得られれば、決議されることになります。
特別決議
区分所有者及び議決権の各4分の3以上の賛成で可決

工事契約の締結

発注者である管理組合と請負者である施工会社間で工事請負契約を締結します。その際、工事請負契約書を取り交わします。工事請負契約書には、工事名称や工事場所、金額、工期、支払方法などが記されています。

工事説明会の実施

大規模修繕の実施前に、工事説明会を開催し、居住者に対して工事内容の説明を行います。主な内容は、以下のとおりです。

  1. 1工期(工程)について
  2. 2工事範囲について
  3. 3仮設(足場など)に関する説明
  4. 4工事中のお願い(騒音、洗濯物干しの規制、バルコニーの片付けのお願いなど)
  5. 5防犯保安対策について
  6. 6緊急連絡体制・現場体制について

工事完了確認

工事完了後は、管理組合立会のもと竣工検査を行います。検査時に不具合が見つかった際は、期日を指定し是正工事を行います。

引き渡し・竣工書類受け渡し

竣工書類の受け渡しをもって大規模修繕工事の完了となります。竣工書類については、以下のとおりです。

  1. 1引渡書
  2. 2受領書
  3. 3工事完了届(竣工届)
  4. 4工事保証書
  5. 5使用材料カタログ
  6. 6施工計画書
  1. 7出荷証明書
  2. 8実施工程表
  3. 9下地劣化集計表
  4. 10定例会議事録
  5. 11工事工程写真
  6. 12産業廃棄物マニフェストなど